山も谷もない30後半Webディレクターの手日記

気が付いたら40の背中が見えるようになってきた、バツイチwebディレクターの仕事にほとんど関係ない、日常のことを綴ったり綴らなかったりするブログ

10年前にマルチ商法みたいなのに勧誘された話を思い出す

中学の同級生から突然呼び出された。最後に会ったのは1年半くらい前。お互い地元に帰省していたので、昼間飲みに行った気がする。私は帰省というより寄生した出戻り息子ではあったが。家も近所で小1からの付き合いではあるが、自分が遠方の高校に入学したことによって疎遠になっていた。その前に会ったのもさらに2,3年さかのぼるし、数年に一回会うような関係である。

 

その友人が特別というわけでもなく、同じ中学出身者が一人もいない高校に飛び込んだ私は、地元のコミュニティからどんどんと遠ざかっていった。友人は疎遠とはいえ私にとって数少ない地元つながりの接点ではあった。二人して上京してからは、自分よりも友人よりも親の方が同級生の動向を把握していた。誰々が結婚しただの、どこどこに就職しただの、どこでバイトしてるだの、井上公造かよ。

 

とはいえ急に会おうと言ってくる知人には注意が必要だろう。金の無心をされたり(私もないのに)、宗教を勧めたり(人はみなどうせ死ぬのに)、ビジネスに誘ったり(会社員もろくにできないのに)してくる。現に10年以上前、就職活動中に別の中学の同級生にビジネスの勧誘をうけたことがあった。

 

その時も留年が決まり実家から都内の大学に通っていた(考えれば考えるほど、私は学習能力なく失敗を繰り返している)。中学卒業後は成人式で会ったくらいの関係だった友人に突然呼び出されたのは秋葉原だった、もしかしたら東京駅かも。どっちでもいいが群馬から出てきた就職活動中の私を友人は駅の改札で出迎えてくれた。留年もせず、すでに就職も決まっていたであろうに友人もスーツだった。スーツっていうかホストみたいに見えた。

 

友人に連れられて行ったのは素人目にも高級とわかるホテルの上の方のカフェ?ラウンジ?みたいなところだった。おいおい、あんなにサッカーボールしか追いかけてなかった田舎者がなんだってこんなところに、なんて軽口を叩いてたら、通された席に先客がいた。

 

おやおや、久しぶりの再会、積もる話もあるだろうにと思っていたら、なんだね、婚約者でも紹介してくれるのかい?ちょっとゴツめの男だけど。

 

友人よりもさらに上物にみえるスーツ、腕には高そう(重そう)な腕時計。いかにも、いかにもな風貌の、ビジネスマンの向かいに座らされる。友人はビジネスマンの隣にスタンバイした。男は優雅にコーヒーを飲んでいる、私はメニューを一瞥しブレンドコーヒーの値段に声を上げそうになる。2,000円。高校生時代喫茶店で働いていた自分にはブレンドの意味がわかる。決して希少なとか高級なという意味はない。バイト先では一番高級なコーヒーだって600円程度だった。その3倍超。標高によって値段て決まるんだっけ。いろんなことを考えたが、無意味だった。雰囲気に飲まれただけで、注文は?と聞かれることはなかった。2,000円のコーヒーは飲めなかった。

 

もう10年以上昔の話なので、細部まで記憶があるわけではないが思い出していこう。まだタブレットが復旧していない時代だったため、男は紙にグラフを書いて説明してきた。「これからの日本で年齢が上がるにつれちゃんと給料が上がっていくと思う?ずっと同じかむしろ下がっていくんだよ」なるほど、今でこそ当たり前のいわゆる年功序列型賃金の崩壊について説明してくれた。「でも家庭を持ったり、家を建てたりしてかかるお金はもっと必要になる」「どうする?」時代が時代なら迷わず、今でしょ!って言いそうなものだが、当時は林先生も一予備校講師である。

 

「答えは、会社にたよらないでお金を稼ぐしかないよね」そんな宣伝文句だったと思う。今聞くと、今よく目にする耳にする話とそっくりである。先見の明がある男だったのだと思うし、だからこそ成功したんだろう。知らないけど。

 

就職活動中だったこともあり、「就職どうするの?将来何になるの?」と聞かれた。私は1クールで将来の夢が変わる男として有名なので、迷わず作家と答えた。「作家、かぁ・・」男がこの日唯一見せた狼狽であった。「作家は頑張って目指してもらうとして」と一蹴され説明は続く。

 

このビジネスは多くの店で特典を得られるポイントカードの会員を増やすというものであった。どの店で使える、貯まるのか全く記憶にない。まだなくってこれから爆発的に広まる、だから今会員になっておくと得だみたいなことは言われた気がする。だから会員を増やすとお金がもらえ、会員になった人が別の会員を増やすと私にさらにお金がもらえるらしい。図にするとこんな感じ。

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あー、見たことあるやつだ。とはいえ、ポイントカードの会員増やすって個人情報集めるってことなのか、カード会員なんて無料が当たり前のこのご時世どうやって彼らは儲けるのか。

 

「最初に会員になる時に、新規会員入会用のカード張り付け済申し込み用紙の印刷代とか困った時のフォローとかで20万円かかるんだけど、そんなの4,5人会員増やせばすぐ返せるから」

 

家でも印刷できそうな紙に名前を書くところが空欄になっているカードが貼りついている。家電量販店でバイトしてるときに配ってたものとそっくりである。そこからなんとなく適当に質問を出した。別の仕事しながらできるんですか、その紙がなくなったらまたお金かかるんですか、Tポイントカードじゃないんですか、とかまあ質問しておいてなんだけど一個も覚えていない。

 

小一時間くらい話を聞いて、よかったら考えてみて、と言われラウンジを後にした。帰りも友人に送ってもらう。友人は何も疑っていないようで、「もう少し慣れてきたら、俺もあの説明をする役になれる」と目をキラキラさせて語っていた。私はそれが眩しくて見ていられなくて、泣きそうになりながら駅で別れて帰った。コーヒーもごちそうしてくれないようなビジネスに参加はしない。

 

そんなことを思い出しながら中学時代の友人にあったが、先客もおらず、最終的に今度新宿二丁目のお互いのなじみの店を案内し合おうという話でわかれた。私には2,000円のコーヒーよりも4,000円のセット料金が合っている。

 

お互いできるとは程遠い学生みたいな恰好をしていた

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