ホメリーマンの修業

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ある休日の昼下がり、新宿駅前。休日だけあって、出身地、国問わず色々な人間がいる。そんなところ滅多に通ったりはしないのだが、乗り換えの都合で通らざるを得なかった。そもそも昼下がりってなんだ。上がることもあるのか。

 

常々、周りを気にして生活しているわけではないので、出歩く際、特に人混みの中なんかは伏し目がちに人と目を合わせないように歩く。このご時世、修学旅行の京都で絡んでくる学生よりも物騒な事件が多いし、視線だけで襲われるか弱い女子が多すぎ、しゃべれないのに容赦なく外国語でまくしたててくる観光客に、私とは一生交わることのないベクトルの熱心さで勧誘してくる宗教団体。無用なトラブルに巻き込まれないために日本人が身に着ける処世術の一つだ。

 

そんな完ぺきな防御に身を包んでいても、難なく突破してくる人間もいる。ぱっと見そんな攻撃力の高そうな人ではなかったが、青年に声をかけられた。

 

「〇〇〇の×××と申します(聞き取れず)。社会人ですか?」

 

ははん、どこぞの営業会社でこんなことをやらされる、と噂に聞く、誰でもいいから名刺をもらってこい修行だろうか。あいにくだが、社外の人と滅多に会うことのない私は名刺を携帯しているわけではない。おまけに今は休日、ついでにいえば私もあなたもスーツではない。さらにいえば、今は7月、君は一体何がしたいのだ、いつ入社なのだ。若い人が多そうな休日の新宿とはいえ、石を投げれば2回に1回くらいは社会人にあたってもおかしくないだろう。そんな中でなぜ私を選ぶんだね。という思いはおくびにも出さず、同意だけする。

 

「2年目ですか!?」

 

ピンポイント!ますます目的がわからなくなる。社会人2年目の人を対象にしたアンケートでもとってるのだろうか。とはいえこっちから質問しても面倒なことになりそうなので、正直に12年目と答える。実際には11年目らしいのだが、もはや誤差の範囲であるし、年齢的には12年目の学年である。留年さえしなければ。青年は一瞬暗い表情を見せて

 

「わ、若いですねえ」

 

といって去っていった。私は若いらしい。新卒2年目のピチピチ(死語)社会人、彼の目的はなんなのかわからなかったが、私は若いという他者評価だけ手に入れて帰ってきた。もしかして彼は、人によって異なる声掛けをして、ちょっとした喜びを人に振りまく、一日一善マンとかだったのかもしれない。芸能人と間違えて話しかけてしまいましたとか、日本の経済情勢が不安で知見ありそうなので聞いてみてしまいましたとか。

 

私は若いと言われても一ミリたりも喜ばないけれど。

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