財布をなくした時にやった方がよかったいくつかのこと
21日も連続で雨が降り続き、夏とは思えない8月を過ごしていた皆さん、いかがお過ごしだろう。夏の開放感も皆無、ジメジメと憂鬱な気分で鏡の中の自分に向かって「お前はイケメンだ」と発言しては虚しい気持ちに堕ちているのでしょう。
天気みたいな、正直どうにもならないことで気分が左右される人間だもの、財布スられたら、そりゃ蝉の幼虫かってくらい地中深く落ち込んだ気持ちにもなる。
最近ようやくその傷が癒え、あとはけたたましく鳴き叫ぶだけと気持ちも切り替えられたので、反面教師になればと思いここに記す。
実家から都内に通勤するようになって半月、ぼちぼち2時間の通勤時間にもなれてきたころ、週末に飲み会の予定が入った。
しかもダブルヘッダー。どんだけ人気者なんだよ、再ブレイクした梅沢富美男かよ、と思いながら、律儀にはしご酒。
田舎暮らしの朝は早いし、終電も早い。調子に乗ってうえーいって酒飲んでるとアラブの石油王から3軒目の誘いが。もはや電車なんてどうでもいい、帰らなくてもいい、酒に溺れたい気分、飲んで飲んで飲まれて飲んでな河島英五気分。
日付変わってからタクシーで合流して、朝までバカのバカによるバカのための宴が続いた。この辺から記憶は曖昧である。
始発かどうかわからないが朝の電車で田舎へ・・・。
ここで記憶が完全に途切れる。
記憶は電車の座席で寝ているところをおっさんに起こされた場面で蘇る。丁寧に起こしてくれる人もいるものだが、当時の私はその緊急事態に慌てて下車する。降りる必要のない駅だったけど。
なんでここで起こされ、降りたかわからないけど、何往復もしてしまっていたんだろう。何度も経験がある。振り子のように目的地に徐々に徐々に近づいていくものである。落ち着いて反対方面に乗り換える。
冷静である。いつもなら反対方向に乗り換えたらすぐにまた寝落ちしてしまうところ、なぜか頭が冴えている。冴えてる頭で鞄の中を見渡したら財布がなかった。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
財 布 が な い。
頭が真っ白になるとはこのことだと思う。船場吉兆のささやき女将が隣にいなくたってわかる。今自分自身が真っ白だ。
必死に記憶の糸を辿る。最後にお金を使ったのはタクシー。飲み会はアラブの石油王の家なのでまるごと世話になったし、〆のラーメンに行った覚えも胃袋もなかった。
体から変な汗が湧き上がる。
地元に着いてそもそもどこから電車乗ったか確認するためsuicaの履歴を印字する。suicaだけはスマホケースに入れていて無事だったのだ。スマホを持っていてよかったと思った瞬間である。履歴によると、解散した地点の最寄り駅でチャージしていた。ここまでは確かに財布があった、繁華街のど真ん中で無くしたという最悪の事態は免れた。きっと駅の落とし物センターにある、そう思って実家に帰宅した。
泥のように眠る。
泥のように眠った結果、何事もなかったように週末を過ごした。何も考えないように過ごした。これは本来もっともやってはいけない行為なので決して真似しないでほしい。
実家の一切お金を使わない安心感が人間を現実逃避に走らせたのだ。一瞬「そういえば財布なくした」という事実が頭をよぎるが、そんな時はスマホでいやらしい動画を探すことで集中力を高めて乗り切った。
ここで、本来財布をなくした人がやらなければいけないことを伝えておく
・カード会社、銀行に連絡してSTOPさせる
・警察に行って被害届(遺失届?)を出す
・泣く
・SNSやブログで不幸自慢する←イマココ(だけ)
私の場合、まだ住所を移動していなかったのでいろいろものすごいややこしいので、そういったもろもろの手続きをしたくなかったのかもしれない。
それにしても本人を証明するものが一つもない状況って、国から認められてない感がすごい。無戸籍700人てニュースになってたけど、どうやって生活すんだろう。
週明けて月曜日会社に行くも、さすがにまずいと思って鉄道会社の忘れ物センターに電話する。全然つながらないから不安になる。付き合いたてのカップルか。
ようやっと繋がった忘れ物係に私はすべてを語った。
・電車に乗ってて財布をなくしたこと
・中には現金、クレカ、免許証、ポイントカード、ガリガリ君の当たり棒、日高屋の割引券、いつかの給与明細が入っていること
・困っていること
・初体験ではないこと
大変ですね、と事務的な返事をくれたあとに、全国に散らばる忘れ物センターと連携するから折り返すと言う。
なぜか、絶対あると確信している私は余裕でソリティアに興じて連絡を待つ。10分後に連絡があった。申し訳なさそうな声で忘れ物係が告げる。別れ際のカップルか。
あったにはあったんですが・・・、
(あったならよかったよ!何が残念なんだ)
現金は抜かれ・・・
(それはそうだ!過去3回中2回は抜かれたもの、気にしない)
財布本体もなく・・・
(???財布がない???)
中のカード類だけゴミ箱に捨てられてました
(え!でも、運がいい方か)
100キロ近く離れた駅の
(ど、ひゃー)
兎にも角にも無事な我が子達を引き取りに乗ったこともない電車にのって降りたこともない駅に引き取りに行った。
駅に向かう電車の中で、あの時起こしてくれたおっさんについて考え、そして気づいてしまった。
あれスリだ。
とんでもないもの(現金とボロボロの財布と、日高屋の割引券とガリガリ君の当たり棒)を盗んだ、あいつはスリだ。
給与明細はなぜか丁寧にたたまれてカード類と一緒に捨てられてた。