母親は呪いのハワイアンキルトをおぼえた
10年くらい前から母親がハワイアンキルトにハマっている。布に様々な柄を張り付けて壁掛けタペストリーみたいなものを作ったり、バッグ、や小物入れなんかも作っている。息子たちには一切遺伝しなかったが、手先が器用な人だなと思いながら眺めていた。
そんなハワイアンキルトで作る代表的なものとして、結婚式のウェルカムボードがある。新郎新婦の名前と亀やらがあしらわれた、布である。母親がハマったこの10年、息子たちに限らず親戚、ママ友の子ども等何人も結婚式をあげていった。自分も経緯は全く覚えていないが、母親にハワイアンキルトでウェルカムボードを頼んだらしい。離婚した今となってはどこにあるのかさえわからないかわいそうな布である。
布ももちろんかわいそうだが、母親本人にも後味の悪い思いをさせたなと思っている。仮にも自分が丹精込めて作った布を送った夫婦が別れたのだから、作り甲斐どこいった状態だろう。別れるために作ったわけではなく、飾られるために送ったのに、今や行方不明である。
そんな母親はこれまで7組の夫婦にハワイアンキルトのウェルカムボードを送った。結婚する本人から頼まれたこともあるし、ママ友である新郎新婦の母親から頼まれたりしている。そして衝撃の事実として、7組の夫婦のうち私を含む3組の夫婦が離婚していた。3組に1組は離婚する時代といったって、これだけの期間でこの確率はイチローかよ。これから先さらに打率の上昇も考えられる。呪いのウェルカムボード。
これを機にそっちに振り切った商売をしてみてはどうだろうか。心では祝福したくない結婚に、(呪いの)心を込めたウェルカムボードを送りませんか?このご時世炎上確実だがある程度注文は来るかもしれない。どんどん母親も魔女みたいになっていきそう。
何もウェルカムボードにこだわる必要だってないのかもしれない。もっといえば結婚じゃなくてもいいかもしれない。片思い中の部活のキャプテン(だいたい野球部かサッカー部)(マネージャーと交際中)(部員公認)(美男美女と評判)(チッ)へバレンタインにチョコレートをハワイアンキルトの包みにいれて渡すだけでよい。数年後、キャプテンはマネージャーと別れて(大学でサークルの後輩と付き合って)いるだろう。
この段落だけいろいろ心の声が漏れていた気がする。
正月ぶりに会った母親が語った近所の(母親同士が仲が良い)同級生の離婚話から発覚したデスウェルカムボード。母親はいたく落ち込んでいるが、残り4組の夫婦も気が気ではない。
私も炎上ビジネスのチャンスを感じて気が気でない。